相手の収入が不自然に低い場合の養育費・婚姻費用(2)
相手の収入が不自然に低い場合の養育費・婚姻費用(2)

相手の収入が不自然に低い場合の養育費・婚姻費用(2)

源泉徴収票だけでは不十分な場合もある

以前の記事(相手の収入が不自然に低い場合の養育費・婚姻費用)では、妻が夫に対し婚姻費用の請求をしたところ、夫がそれまで行っていた夜勤をしなくなったため給与が減ったなどと主張した事案で、夫の勤務先は夫の親族が経営する会社であることや、夫は婚姻費用を請求する前月まで夜勤を続けていたにもかかわらず、婚姻費用を請求した途端に夜勤をしなくなった経緯などを証拠に基づき丁寧に説明することで、夫が夜勤をしなくなったのは婚姻費用の額を抑えるための意図的なものである、との判断を得ることができた事案をご紹介しました。

次の事例も、元夫が適応障害等で働く時間が減り、収入が減ったと主張していた事案ですが、元夫の出退勤時間等を詳細に調査し、傷病前と変わらず稼働していること等を立証することで、元夫の稼働能力は相当程度改善している、就労に支障が生じている状態ではない、との判断を得ることができました。

令和3年(家)第222号,同第223号 養育費増額申立事件

(中略)

「相手方の年収は,本件会社作成の源泉徴収票に記載の金額は,351万円程度である。この点,申立人は,相手方が収益物件を所有している旨主張するけれども,相手方が本件会社からの給与以外に収入を得ていると認めるに足る的確な証拠はない。ただし,本件会社が相手方に対し同社所有の高級車の通勤等での使用を許している点については,相手方が本件会社から源泉徴収票の給与に加えて高級車の使用利益を実質的な就労の対価として得ているとみることができるのであって,源泉徴収票の金額のみを養育費算定の基礎とするのは相当でない

 また,相手方は,前件審判時から状況は変わっておらず,現在の収入も妥当である旨主張するけれども,令和3年2月4日から同年3月5日までの30日間のうち,遅刻及び早退は各1日あったものの1日も欠勤せず,残業や外泊を伴う出張までしているのであるから,遅刻をすることがほとんどで休みも多かったという前件審判時に比べれば,稼働能力が相当程度改善しているというべきである

 この点,相手方は,会社にいると心的ストレスから逃げたい気持ちになり,中抜け(さぼり)をしている旨主張し,令和3年1月14日から同年2月20日までの38日間のうち,6回にわたり各52分ないし1時間44分外出して中抜けをした,車の中で24分さぼる休憩を1回した,昼休憩が通常1時間であるところ相手方は常時1時間10ないし20分程度とっているが上記38日間のうち3日間は1時間28分ないし2時間44分休憩したなどと主張するものの(乙31ないし33),相手方の主張する中抜けの頻度や内容(マッサージ店の利用(乙20)や通院(乙21,22,35))等に鑑みれば,適応障害が原因とは考え難い。仮に,相手方の主張のとおり,現在は相手方の社内での立場が適応障害の大きな原因となっており,そのために仕事中に中抜けをしてしまい,そのために収入が上がらないのだとすれば,その問題は相手方が本件会社から転職することによって解消することが可能であると考えられるから,相手方の稼働能力としては就労に支障が生じている状態ではないと認めるのが相当である。」

終わりに

当事務所では、上記事例の他にも、相手方の収入資料に不自然な点がある事案で、適切な証拠を集めて説得的な立証活動を行うことで、多数の事案で婚姻費用や養育費の増額審判や和解を勝ち取った実績があります。

このような事案でお困りの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

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